ASTM D638:プラスチックの引張試験に関する定義ガイド

ASTM D638に準じたプラスチックの引張強度試験の実施


筆者:Erica Lawrence

ASTM D638は、強化プラスチックおよび非強化プラスチックの引張特性を測定するための一般的な試験規格です。プラスチックの使用量が未だかつてないほどに増加した今、メーカーにとって材料の機械的強度を適切に測定することが重要になっています。このガイドでは、ASTM D638プラスチック引張試験の基本的な要素について、必要な装置、ソフトウェア、サンプルの概要などをご紹介します。ASTM D638に沿った試験を計画している場合は、このガイドは規格全文に相当しないことをご理解ください。

測定の対象となるもの

ASTM D638は、サンプルの試験片に引張力を加え、応力をかけた状態で試験片のさまざまな特性を測定することにより行われます。万能試験機(引張試験機ともいう)を用いて、試験片が破断(降伏または破壊)するまで1~500 mm/分の引張速度で行います。ASTM D638ではさまざまな引張特性を測定しますが、最も一般的なものは以下の通りです。

  • 引張強度– プラスチックが降伏(元に戻せないほど伸びる)または破断するまでに加えられる荷重の大きさ。
  • 引張弾性係数 – 材料が降伏するまで、応力によってどれだけ変形(伸張)するかを示す値。弾性係数は、材料の剛性を示す指標です。
  • 伸び– 破断後のゲージ長の増加分を元のゲージ長で割ったもの。伸び率が大きいほど、延性が高くなります。
  • ポアソン比 - 材料をどこまで伸ばせるか、伸ばすことでどこまで薄くなるかの関係を示す測定値。

ASTM D638 プラスチックの引張特性

ASTM D638はお客様にとって最適な規格ですか?


プラスチックの種類によって、さまざまな試験メソッドがあります。ASTM D638は、厚さ1.00 mmから14 mmまでの硬質プラスチックサンプルにのみ適用されます。サンプルが厚さ1.00 mm未満のシートまたはフィルムである場合、ASTM D882に準拠した試験を行う必要があります。ASTM D638はISO 527-2と同様の結果をもたらしますが、試験片のサイズと試験要件が異なるため、技術的に同等とはみなされません。大手多国籍メーカーの中には、ASTM D638とISO 527-2の両方に準じて試験を行うところもありますが、お客様の多くは所在地に応じてどちらの規格を優先するかを表明しています。通常、北米のメーカーはASTM D638で試験を行い、ヨーロッパとアジアのメーカーは主にISO 527-2で試験を行っています。中国では、ASTM D638とISO 527-2に準じた試験を行っています。これらの試験メソッドはすべて、Bluehill® Universalのアプリケーションモジュールで確認できます。ここには、ASTMとISOの最も一般的な規格に対応した試験メソッドテンプレートがあらかじめ設定されています。

材料試験システム


ASTM D638試験のほとんどは、インストロンの6800シリーズのような卓上型万能試験機で実施されます。5 kNまたは10 kN(1125または2250 lbf)のシステムが最も一般的ですが、強化プラスチックや複合材の強度が上がると、30 kNや50 kNのシステムなど、より大きな容量のユニットが必要になる場合があります。




ASTM D638に準じた試験の設定
Instron 6800
Bluehill Universalダッシュボード(2490-696)
2580シリーズロードセル
5 kN空気圧式グリップ(2712-045)

 

ASTM D638 system setup

グリップ

試験片を引張試験機内で固定することが重要です。硬質プラスチックを保持するためには、ヤスリ目のフェースを取り付けた空気圧式グリップが最適であることがよくあります。空気圧式グリップでは、試験中に試験片の厚みが大きく変化しても、空気圧によってグリップ力が一定に保たれます。10 kNを超える力(通常、強化素材にのみ見られる)には、手動式くさび型グリップが好まれます。

10 kNモデル | 2712-046
2616-010
5 kNモデル | 2716-010

試験片の種類

ASTM D638で許容される試験片タイプには5つの種類があり、試験片の厚さや使用できる材料の量によって大きさが異なります。最も一般的に使用されるのは、射出成形で作成されることが多い、厚さ3.2 mmのタイプIの試験片です。タイプIの試験片は全長165 mm、幅13 mmで、ゲージ長は50 mmです。平板試験片は、一般的に「ドッグボーン型」または「ダンベル型」の形状に成形、型抜き、機械加工されます。これにより、クランプ部ではなく試験片中心で破断が発生するようになっています。ASTM D638では、平板試験片に加えて硬質なチューブやロッドの試験も可能ですが、これらはいずれもドッグボーンの形状に加工する必要があります。材料が限られている場合、多くの試験室はタイプIVまたはタイプVの試験片が使用されます。タイプIVの試験片に必要な寸法は、ASTM D412のダイカットCに必要な寸法と同じです。つまり、同じダイカットを使用できることを意味しています。タイプVの試験片は最も小さく、ゲージ長はわずか0.3インチです。

試験片の測定


ASTM D5947に準じて試験する前に、すべての試験片を計測する必要があります ほとんどの一般的なマイクロメーターは、これらの計測に適しています。試験システムで、荷重の測定値でなく応力の測定値も表示するため、オペレーターは試験片の断面積(または厚みと幅)を入力するよう要求されます。応力=力/断面積(Psi、Pa、kPa、GPaなどの単位で表示されます)として求められるからです。

ダイカットや機械加工されたサンプルは個別に測定する必要がありますが、射出成形されたサンプルを使用する場合は、そのサンプルロットから1つのサンプルを測定するだけで済みます。ただしその場合は、その試験片ロットの変動が1%未満であることが証明される必要があります。射出成形された試験片は、完全な正方形ではなく、抜き勾配で製造されることが多いので、測定時にはこれを考慮する必要があります。幅の測定は、必ず抜き勾配の中心で行ってください。

Bluehill Universalの自動試験片測定装置の機能により、オペレーターは最大2台のマイクロメーターや測定装置をコンピューターに接続し、データを直接ソフトウェアに入力することができます。これによって入力ミスが減り、効率性が向上します。

試験片のアライメント

試験を適切に行うには、試験片は斜めに傾けず、フェースに対して垂直になるように保持する必要があります。試験片のアライメント不良は、結果の大きなばらつきの原因となるため、各試験で試験片がすべて一貫して配置する必要があります。アライメントのずれに対処するには、試験片の幅に近いフェースを使用する方法があります。この方法では、目視で比較的容易に配置を調整できます。しかし、アライメント不良を防ぐ最も簡単な方法は、グリップ本体に試験片アライメント装置を直接使用することです。これは、試験片が正しく配置されていることをオペレーターが簡単に確認するため、停止位置を調整できるシンプルな棒状のデバイスです。

試験に備えてグリップをプラスチック試験片に締め付けると、不要な圧縮力がかかることがよくあります。このような荷重は、微小であっても、適切に処理しなければ試験結果に支障をきたすことがあります。試験結果にオフセットが生じるため、試験片を挿入後に平衡化しないことが重要です。Bluehill Universalソフトウェアは、複数の試験片に対する荷重を正規化し、たわみや圧縮力を除去するようプログラムできるため、試験片に対して一貫した結果を得ることができます。6800シリーズ万能試験機では、試験片保護機能の使用も推奨しています。これは、試験の動作限界を定める前の設定段階において、試験片やシステムの損傷を防止するために設計されています。試験片保護機能をオンにすると、クロスヘッドが自動的に調整され、不要な荷重が所定の範囲内に制限されます。

試験片保護機能の詳細情報については、こちらのビデオをご覧ください。

引張試験用の伸び計

弾性係数(引張力に対して試験片がどれだけ伸縮するか)は、ASTM D638プラスチック引張試験で収集されるデータの中でも特に重要なタイプの1つです。このデータを収集するには、適切なひずみ測定装置(伸び計)が必要です。弾性係数測定用の伸び計は、ASTM E83 Class B-2に準拠する必要があります。

試験室のニーズに応じ、いくつかの伸び計のオプションがあります。最もシンプルなタイプは、固定ゲージ長の2630シリーズのクリップ式伸び計です。オペレーターは、各試験の開始時にこれを直接試験片にクリップし、試験片が降伏した後、あるいは試験片が破断する前に取り外す必要があります。ポアソン比の試験を行う場合は、試験片の弾性領域全体における幅の変化を測定するために横方向伸び計も追加する必要があります。スタンドアロンの横方向伸び計は、既存のクリップ式または自動伸び計を補足するために使用できます。また、2軸デバイスを使用して軸方向と横方向のひずみを同時に測定することも可能です。

  ASTM D638伸び計

AutoX750は、試験オペレーターの干渉なしに、自動で試験片に装着する伸び計です。オペレーターによる手動操作の手間を省き、多数の試験片に対してより安定した配置を実現するため、高い試験処理能力を必要とする試験室において有用です。一貫して配置することで、より再現性の高い弾性係数値が得られます。ASTM D790のような他の規格で試験を行う場合、自動伸び計は1台の装置で異なるゲージ長を使用できる柔軟性も備えています。試験対象のプラスチックは、最終的に温度環境下で使用されることが多くあります。これらの最終用途をシミュレートするために、ASTM D638は加熱または冷却(LN2またはCO2)を使用できる恒温槽で実施されます。このような場合には、非接触式の高性能ビデオ伸び計 (AVE2)を使用することをお勧めします。AVE 2は、試験中に恒温槽を開閉するために起きる温度変動を起こさずに、弾性係数データを収集することができます。

ASTM D638伸び計  

計算と結果

試験結果を示す際は、規格への準拠を保証し、異なる試験室間でのデータ比較を容易にするために、用語の定義を適切に行うことが重要です。データ報告で最もよくある誤りは、間違ったソース(クロスヘッドではなく伸び計)を使ってひずみ値を報告することです。これによって、結果が大きく異なることがあります。

プラスチックの試験規格には公称ひずみという用語がありますが、これはどの試験メソッドを使うかによって定義が異なります。ASTM D638では、公称ひずみは伸び計からではなく、クロスヘッド変位から測定されたひずみとして定義されています。これは、プラスチックが均質に分解されず、サンプルの不相応に小さな部分にひずみが集中することが多いためです。この性質は「ネッキング」と呼ばれます。ネッキングや降伏点を持つ材料では、伸び計で破断伸び率を報告することはできません。それは、伸び計のゲージ長の外側でネッキングが発生する可能性があるからです。したがって、降伏後のどの点においても、公称ひずみを用いて伸び率を報告する必要があります。破断ひずみの測定に伸び計を使用するのは、ひずみが試験片全体で均質で、かつネッキングや降伏を示さない場合のみ許容されます。

Bluehill Universal応力ひずみ曲線と試験結果

弾性係数

異なる挙動を示すプラスチックでは、異なる弾性係数の計算を使用して、試験の弾性部分を適切に捉える必要があります。最近の試験ソフトウェアのほとんどは、弾性係数の計算をカスタマイズできます。弾性率の計算方法を理解することは、結果の一貫性を確保するために重要です。

真の直線部分を示さない材料に対しては、一般的に、ゼロと曲線上の任意のユーザー定義点との間に弾性係数を作成するセカント弾性係数を推奨しています。セグメント弾性係数計算は、指定された始点と終点の間でベストフィット直線を形成し、最小二乗適合を行います。最も一般的なのはヤング弾性係数の計算で、いくつかの領域で傾斜を求め、最小二乗適合で最も急な傾斜を報告します。Bluehill Universalでは、ユーザーが複数の領域を定義するか、自動ヤング係数の計算を使用するか、どちらかを選択することができます。

試験処理能力


大量の試験を必要とする試験室では、引張試験機のセットアップにいくつかの変更を加えることで、試験プロセスをスピードアップし、完全自動化試験システムに相当する試験処理能力を実現できます。完全自動化システムは、試験片の測定、試験片の取り付け、試験、取り外しが組み込まれており、オペレーターの介入なしに何時間も稼動できるように設計されています。これらのシステムは、人為的エラーによるばらつきを減らし、オペレーターが帰宅した後も結果を継続的に得られるよう、シフト終了後も稼働させることができます

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