ASTM D882の定義ガイド - 薄いプラスチックフィルムの引張試験メソッド


ASTM D882に準じたフィルム試験

ASTM D882に準拠した薄いプラスチックフィルムの引張試験の実施

筆者:Charlie Pryor 

薄手のプラスチックフィルムやシートは、食品用から消費者製品に至るまで、多くの日用品を保護するパッケージ材としてよく利用されています。プラスチックメーカーやパッケージメーカーは、自社で製造しているプラスチックフィルムの正確な機械的プロファイルを入手し、要求事項に確実に応えなくてはなりません。ASTM D882は、薄いプラスチックフィルムの引張特性を測定するための試験規格で、インラインの品質管理目的で一般的に使用されています。 このガイドは、ASTM D882引張試験の基本的な要素について、必要な試験装置、ソフトウェア、サンプルの概要などをご紹介します。ASTM D882に沿った試験を計画している場合は、このガイドは規格全文に相当しないことをご理解ください。


電気自動車用バッテリーのセパレータフィルム試験

最近、電気自動車市場では、ASTM D882に準じた試験が、EVバッテリーで使用するセパレータフィルムの機械的特性の評価のために採用されています。セパレータフィルムは、リチウムイオンをはじめとする液体電解質電池でアノードとカソードを分離する重要部品です。セパレータフィルムに用いる最も一般的な材料は、組立中の巻線作業に耐え、長期使用によるアノード上の不均等なリチウムメッキの付着に耐える、十分な強度を備えたポリマーフィルム、ポリオレフィンです。安全性と強度に優れたセパレータ材料を使用すれば、アノードとカソードの接触が効果的に防止され、材料の薄さによって電池の重量が軽くなり、エネルギー密度が改善されます。

ASTM D882に準じたこれらの材料の試験は、品質管理で非常に有益となり得るだけでなく、研究開発でも、最適なセパレータフィルムソリューションの決定に役立つことがあります。また、その他多くのフィルム材料の場合のように、セパレータフィルムは異方性であるため、さまざまな切断方向と試験方向で試験することを推奨します。

電気自動車の試験の詳細

 

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測定の対象となるもの

ASTM D882は、特に厚さ1 mm未満のプラスチックの試験用に作られており、この厚さ定義範囲のあらゆるタイプのプラスチック試験片の試験に使用することができます。1 mmを超える厚さのプラスチックについては、ASTM D638で試験する必要があります。ASTM D882試験は、万能試験機(引張試験機とも呼ばれる)を用いて、一定のクロスヘッド速度で実施されます。一般的によく測定される引張特性は以下のとおりです。

 試験メソッドと試験片

ASTM D882の試験では、試験片が破断するまで張力をかけます。クロスヘッド速度は試験片の長さに依存し、初期グリップ分離(試験片の長さ)と初期ひずみ速度(単位mm/mm×分)を掛け合わせることで算出できます。初期ひずみ速度は、試験片の破断時最大伸びに依存します。プラスチックフィルムやシートは伸縮性が高いため、一般的に高いクロスヘッド速度が要求されます。 ASTM D882の試験で重要な要素の1つは、適切な初期荷重を使用することです。フィルムの試験片は通常、試験用のグリップに装填される際、ピンと張った状態ではなく、たるんだ状態です。初期荷重は Bluehill Universal 試験ソフトウェアで簡単に設定でき、試験中にデータを記録する前に試験片のたるみを取り除き、結果の正確さと再現性を確保するのに役立ちます。 

この試験は、グリップ間の試験片の長さにわたって、厚さの差が10%以内の均一な試験片を対象としています。1 mmの厚さ限界に近い厚みのある試験片については、5%以内で均一でなくてはなりません。試験片は幅5.0~25.4 mm、長さは試験中に使用するグリップ間隔より50 mm以上必要です。試験用の標準的な試験片ゲージ長は250 mmです。ただしそれが不可能な場合は、結果に影響を与えないことが立証されれば、試験片の長さは最低100 mm(ゲージ長 50 mm)までが許容範囲です。サンプルが等方性材料の場合、規格では各試料から少なくとも5つの試験片を試験することを要求しています。しかし、サンプルが異方性であることが疑われる場合、 長軸方向に5つ、異方性軸方向に5つ、少なくとも合計10個の試験片を試験する必要があります。さらに、弾性係数の測定に使用した試験片は、引張強度やその他の引張特性の測定には使用できません。つまり、ASTM D882の試験を行う場合は、関連するすべての特性を適切に測定するために、多数の試験片を作成することが賢明といえます。 

試験システム

これらの試験片の破断力は低いため、ASTM D882試験は通常、インストロンの34SCシリーズか、68SCシリーズシステムのようなシングルコラム万能試験機で実施されます。しかし、多くのフィルム試験片は高い破断伸びを示すため、複雑な問題が発生することがあります。これらの試験片を標準的なゲージ長250 mmで試験する場合、破断までの試験を行うために、高さを拡張したシングルコラムフレームや、場合によってはデュアルコラムフレームが必要になることもあります。インストロンの6800 シリーズは、試験システムに高度な機能を求める試験室に最適です。


 

ASTM D882に準じた試験の設定
1) 6800シリーズ万能材料試験機
2) Bluehill Universalソフトウェア
3) 2580シリーズロードセル
4) 2712シリーズ空気圧式グリップ

 

インストロンシステム






グリップ

このようなプラスチック製の試験片は柔らかく繊細なため、グリップが困難な場合があります。空気圧式グリップ は、試験中に試験片をしっかりつかめるよう、吸気圧を調整することができます。空気圧式グリップは、ネジ式や手締め式グリップよりもフィルムの試験に適しています。後者のグリップはクランプ圧にばらつきがあるため、一貫性のない試験結果になり、フェースが破損したり滑ったりする可能性が高くなります。非常に薄いフィルムの試験片の場合、自動締め付け式のローラーグリップを使用することもあります。

2712-041
1 kNモデル | 2712-041
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1 kNモデル | 2713-007

フェース

ASTM D882の試験片は繊細なので、フェースの選択も試験の成功に欠かせません。ヤスリ目のフェースは、グリップ時に試験片にダメージを与え、フェースの破損や不正確な結果につながる可能性があるため、推奨できません。ゴム製のフェースはフィルム状の試験片を傷つけず、試験中にフェース接面で薄くなった試験片の滑りを防ぐことができます。そのため、ゴム製フェースと空気圧グリップは好ましい組み合わせであると言えます。この組み合わせで、最も再現性の高い結果を得ることができます。 

ゴム製フェースは、試験片のグリップまたはタブ端の幅と一致させる必要があります。このタイプの材料の最も一般的なフェースサイズは、25 mm×25 mm(1インチ×1インチ)です。幅を揃えることで、良好な破断と正確な試験結果を得るために重要な、試験片のアライメントを容易に行えます。試験片の幅が規格の公差の最小値に近い場合は、少なくとも試験片と同じ幅のフェースを持つ必要があります。ただし、それよりも幅広でもかまいません。

また、ゴム製フェースで固定するには薄すぎるフィルム状の試験片では、ラインコンタクトフェースもご使用いただけます。ラインコンタクトフェースは、滑らかなフェースと丸みを帯びた反対側のフェースを持ち、クロスヘッドの動きに対して垂直な1本の線に沿ってつかむ力を分散させることができます。グリップの最も重要な点は、試験時に滑らないようにすることと、試験中の各試験片の応力分布を均一に保つことです。

電気自動車用バッテリーの自動ASTM D882自動化試験

電気自動車産業の爆発的な成長が予想されるため、バッテリーメーカーは可能な限り早く試験処理能力を拡大し、予想される需要増加に対応できるよう検討をすることをインストロンは提案いたします。試験量が増えると重要になるのが、処理能力と効率性です。インストロンは、試験室の生産性を高めるために、多くの自動化オプションを提供しています。当社の全自動システムには、自動 オプションと半自動 オプションのどちらもご用意があり、大量のフィルム試験片の試験に適しています。これらのシステムは、オペレータを解放し、処理能力を最大化して、最適な結果を維持するように設計されています。


結果

インストロンのBluehill® Universal試験ソフトウェアにより、規格に準拠したレポート計算が容易に行えます。ソフトウェアには、ASTM D882試験用に事前設定された試験メソッドも付属しており、適合性を確保するために、特定の試験パラメータと計算を完備しています。

Bluehill Universal ASTM D882

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