ASTM F1717-18、ASTM F2706-18、ISO 12189-8に準拠した脊椎インプラント構造の周期的疲労試験に関するガイド

Toby Lane著

規格の概要と試験要求患者の日常活動の中で、脊椎構造およびインプラントアセンブリには、高い生体内荷重が加わります。したがって、致命的な破損を回避するために試験が必要です。多くの場合、脊椎損傷の原因は、回転、曲げ、軸負荷に起因して脱臼や骨折を引き起こします。静的試験の目的は、脊椎破壊が起こる荷重を評価することです。一方、疲労試験は、低荷重に繰り返し曝された場合に、損傷が起こるまでのサイクル数を評価する目的で実行します。

脊椎構造においては、致命的な損傷よりも疲労損傷の方がより一般的なので、疲労試験(または使用可能寿命試験)は極めて重要です。荷重は通常、定荷重振幅制御条件の正弦波形により、500万サイクル以上負荷されます。




ASTM F1717「脊椎切除術モデルにおける脊椎インプラント構造の標準試験メソッド」およびASTM 2706「脊椎切除術モデルにおける後頭部頸部および後頭部頸部胸部脊椎インプラント構造の標準試験メソッド」は、脊椎インプラントアセンブリの静的試験および疲労試験の方法を規定しています。以下の試験が含まれます。
  • 静的圧縮曲げ試験
  • 静的引張曲げ試験
  • 静的ねじり試験
  • 動的圧縮曲げ疲労試験

ISO 12189「外科用インプラント–埋め込み型脊椎デバイスの機械的試験–前方支持を使用する脊椎インプラントアセンブリの疲労試験メソッド」でも、非常に似通った動的圧縮曲げ疲労試験が規定されています。

脊椎構造に関する大多数の試験では、椎骨ではなく超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ブロックを使用します。 骨質や骨形状による変動を避けるためです。 規格を熟読し、要件を余さず理解することを推奨します。






脊椎インプラント試験の課題
  • 軸ねじり試験システムがなければ規格への完全準拠は不可能です
  • 試験では簡略化された荷重スキームを使用し、患者の日常生活の中で構造に生じる複雑な生体内荷重を表現します
  • 最初に大気中で試験を実行し、その後、生理食塩水中で試験を完了する必要があります。これにより、試験周波数が5 Hzに制限されます
  • ねじり試験が時計回りか反時計回りかによって、結果が異なる場合があります


試験システムこの規格に規定された全種類の試験に対応するには、軸ねじりシステムが必要です。このシステムを使用すると、メーカーおよび研究者が広範囲のインプラント設計について、静的試験と疲労試験の両方を1つの試験システムで実行できます。ElectroPuls® E3000リニア/トーション電気駆動式動的試験機、ElectroPuls E10000リニア/トーション電気駆動式動的試験機、および8874油圧サーボ試験機は、専用の治具を併用することで、この規格に準拠した試験に必要な機能を提供します。

生体内の条件をシミュレートするため、温度制御されたバスを各システムと組み合わせて使用可能です。また、可動式の軸ねじりアクチュエータの端にインストロンの幅広いBiaxial Dynacell ロードセルを装着することにより、慣性荷重に起因する誤差を自動的に補正できます。

WaveMatrix3 ソフトウェアに加え、特許取得済みの剛性ベースチューニング、Dynacellによる慣性エラー補正などの機能を利用して試験を行うことにより、システム応答、波形忠実性、分解能が最適化されます。


ElectroPuls E3000 2軸脊椎治具

ElectroPuls E3000 2軸脊椎治具




試験治具

2370K脊椎インプラント治具F1717
ASTM F1717、ASTM F2706、ISO 12189に準拠した試験の対象となる多様な脊椎アセンブリがあります。目的とする脊椎位置および脊椎への適用メソッドにより、コンポーネントの組み合わせが異なります。異なるアセンブリで同じ治具を使用できるよう、試験機での治具との接合には、脊椎アセンブリごとに個別製作した、使い捨てのUHMWPEブロックを使用します。40 ± 3MPaの引張破壊強度を備えたUHMWPEを使用し、骨質および骨形状の変動による影響を避ける必要があります。ISO規格では、圧縮荷重が加わったときの円板の生理学的作用を模倣するため、バネの使用も推奨されています。

インストロンの治具ソリューションには、専用の耐腐食性アダプタが含まれています。これらのアダプタは、生体内試験をシミュレートする目的でオプションとして試験機ベースに装着可能な生理食塩水バスに、容易に装着できます。バスを使用する場合、アクチュエータに装着されたロードセルは、インストロンが特許を取得したDynacellテクノロジーにより慣性エラー補正を実行し、データの信頼性を確保します。

治具の設計は、2組のサイドサポートで構成されています。一方は堅く固定され、もう一方は、軸力の軸を中心とする回転に適応する取付板を介して装着されます。サイドサポートは、ヒンジピン機構によってUHMWPE試験ブロックと容易に接合できます。これにより、軸力の方向に対して常に水平に保たれるヒンジピンを中心に、ブロックが自由に回転できます。ねじり試験の場合に限り、取付板の回転がアルミニウム製ブロックによって抑制されます。

試験パラメータASTM F1717およびASTM F2706で規定される3つの静的機械試験では、5個以上のサンプルを使用して、脊椎破壊を引き起こす荷重を評価する必要があります。
  • 静的圧縮曲げ試験:25 mm/分の最大荷重速度を使用して、荷重-変位量曲線を生成します。記載すべき値は、2%のオフセット降伏における変位量の平均および標準偏差(mm)、弾性変位量(mm)、圧縮曲げ降伏荷重(N)、圧縮曲げ剛性(N/mm)、圧縮曲げ最終変位量(mm)、および圧縮曲げ最終荷重(N)です。
  • 静的引張曲げ試験:25 mm/分の最大荷重速度を使用して、荷重-変位量曲線を生成します。記載すべき値は、2%のオフセット降伏における変位量の平均および標準偏差(mm)、弾性変位量(mm)、引張曲げ降伏荷重(N)、引張曲げ剛性(N/mm)、引張曲げ最終変位量(mm)、および引張曲げ最終荷重(N)です。
  • 静的ねじり試験:60 º/分の最大荷重速度、軸荷重ゼロを使用して、トルク-角度変位量曲線を生成します。記載すべき値は、2%のオフセット降伏における角度変位量の平均および標準偏差(度)、弾性角度変位量(度)、降伏トルク(N-m)、およびねじり剛性(N-m/度)です。2%のオフセット降伏における角度変位量、弾性角度変位量、降伏トルクおよびねじり剛性。

両方の規格で規定されている動的試験には、疲労破壊が起こるまでのサイクル数を評価する周期的試験があります。2個以上の構造を試験します。
  • 圧縮曲げ疲労試験:ASTMでは、静的圧縮曲げ試験の75、50、25%を初期的な疲労荷重として使用するよう推奨されています。ISOでは、生理学的な代表値として2000 Nが提案されています。一定の荷重振幅率(≥10)を保ち、最大500万サイクルで試験を実行します。最大周波数は5 Hzです。圧縮曲げ荷重/サイクル数の半対数疲労曲線が生成されます。生理食塩水の中で疲労試験を実行すると、フレッチング腐食や潤滑油の相互連結が起こって相対的なパフォーマンスに影響が及ぶ可能性があるため、最初に大気中で試験を実行して一貫性を保つ必要があります。脊椎切除術モデルをシミュレートするには、2つのUHMWPE試験ブロックの間に広い隙間を設けます。