曲げ試験
概要


曲げ試験は、屈曲試験や横梁試験と呼ばれることもあり、単純な梁荷重を加えたときの材料の挙動を測定します。この試験は、一般にポリマーや木材、複合材など、比較的柔軟な素材に対して実施します。最も基本的なレベルでは、曲げ試験は万能試験機で実施します。2つのサポートアンビル上に試験片を置き、それを1つまたは2つのアンビル上で荷重を加えて曲げることでその特性を測定します。

曲げ試験を実施する理由

しばしばエンジニアは、材料の挙動をさまざまな側面から理解したいと考えます。しかし、単純な単軸引張試験や圧縮試験では、必要なすべての情報を得ることができないことがあります。試験片を曲げると、引張や圧縮、せん断などの力が複雑に絡み合うことになります。この理由から、曲げ試験は現実的な荷重状況に対する材料の反応を評価する目的でよく使用されます。

曲げ試験データは、材料が支持構造として使用される場合に特に有用なことがあります。たとえばプラスチック製の椅子は、多方面に支持を提供する必要があります。使用時に脚が圧縮状態になる一方で、その台座は座っている人から加わる曲げの力に耐える必要があります。メーカーが想定される荷重に耐える製品を提供することを望むだけでなく、万が一、曲がったときには、製品の材料が元の形状に戻る必要もあります。

曲げ試験の種類
3点曲げ試験

3点曲げ試験

3点曲げ試験は、2つの下アンビルの間で試験片のバランスをとりながら、中間点を中心とする1つの上アンビルから力を加える試験です。応力が均一である範囲は非常に小さく、中央の荷重点の下に集中します。試験規格によっては、アンビルの固定や回転、あるいは揺動が必要になることがあります。




4点曲げ試験

4点曲げ試験

4点曲げ試験は3点曲げ試験と異なり、2つの上アンビルを試験片の中心から等距離に配置します。この試験では、均一な応力がかかる範囲は、内スパンの荷重点間(通常は、外スパンの長さの半分)に存在します。ここでも、試験規格の要件に応じて、アンビルの固定や回転、揺動が必要になることがります。一般に、脆性材料の曲げ弾性率の測定には、4点試験を使用します。







曲げ試験機
コンポーネントと部品



一般に曲げ試験は万能試験機で実施します。こうしたシステムは、ロードセル試験用ソフトウェア、および用途に応じたグリップやアクセサリー伸び計など)を備えた試験フレームで構成されます。必要となるアクセサリーの種類は、試験対象の材料の種類によって決まります。また、試験機の荷重容量範囲内であれば、1台の機械で治具を変更するだけで、どのような材料も試験できます。


曲げ試験システム



曲げ試験の準備
引張用グリップ
万能試験機のロードフレームはシングルコラムまたはデュアルコラムの構成で、最大2,000kNまでの荷重容量のものがあります。
ソフトウェア
試験用ソフトウェアによって、ユーザーはテスト方法を設定し、結果を出力できます。
ロードセル
ロードセルは、試験片に加わる力を測定するトランスデューサです。インストロンのロードセルには、ロードセル容量の1/1000の精度があります。
試験用治具
曲げ試験では、上下のアンビルを使って試験片の要所に力を加える必要があります。アンビルの個数は、実施する試験の種類によって決まります。

 


万能試験機はさまざまなサイズのものを取り揃えており、荷重容量は0.02N~2,000kNまでの範囲です。ほとんどの低荷重試験は、電気機械式のシングルコラムまたはデュアルコラム卓上型試験機で行えるのに対し、高荷重の用途には床置型のフレームが必要です。インストロンの6800シリーズシステムは最大300kNまでの容量に対応でき、引張や圧縮、曲げ、剥離、引裂、せん断、摩擦、ねじり、穿刺など、さまざまな種類の試験を実施できます。インストロンのIndustrialシリーズの油圧サーボ式システムはさらに高容量の試験向けであり、高強度の金属や合金、高度複合材料に対応することができます。ElectroPlusシリーズは、動的疲労試験用です。


6800シリーズ万能試験システム

万能試験システム
最大300kN

0.02N(2gf)~300kNの範囲の荷重容量を持つシングルおよびデュアルコラムの卓上および床置型試験システム。

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最大2000kNのIndustrialシリーズ万能試験システム

最大2000 kNのIndustrialシリーズ
万能試験システム

インストロンのIndustrialシリーズはシングルまたはデュアル試験スペースからなるフレームで構成され、300kNから2000kNの範囲の荷重容量のものがあります。

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Electropuls試験システム

ElectroPuls電気駆動式動的疲労試験システム

疲労・破壊力学試験用のリニア電気モーター駆動の動的試験機で、最大20kNまでの荷重容量のものがあります。

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曲げ治具のモデル
プラスチック、金属、合金、複合材、マイクロエレクトロニクス、コンポーネントの試験用


5kN曲げ試験用治具

5kN曲げ治具
カタログ番号 2810-400

曲げ治具を使用すると、曲げ弾性率や曲げ強度、曲げ降伏力の測定など、さまざまな曲げ試験および破壊靭性結合試験を行うことができます。3点治具は、オプションのコンバージョンキットを使って4点曲げ用に簡単に変更できます。

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100kN曲げ治具

100kN曲げ治具
カタログ番号 2810-182

100kN曲げ治具では、最大50mmまでの幅の試験片に対して3点曲げ試験を行うことができます。4点曲げコンバージョンキットをご用意してます。下部スパンは30~250mmの範囲で調整可能。

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2810-206 250kN曲げ治具

250kN曲げ治具
カタログ番号 2810-206

250kN曲げ治具では、最大100mmまでの幅の試験片に対して3点曲げ試験を行うことができます。4点曲げコンバージョンキットをご用意してます。下部スパンは10~600mmの範囲で調整可能。

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W-6810 100kN曲げ治具

100kNガイド付き曲げ/溶接曲げ試験用治具
カタログ番号 W-6810

平面板または溶接された平板試験片の「U」字型曲げ試験でスパンの調整が可能。この治具はTスロットベースで構成され、スパンは0~254mmの範囲で調整可能で、2本のタイロッドで支えられています。最大76mmまでの幅の試験片に対応。

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鉄筋バー用のW-6812 200kN冷間曲げ試験治具

スチール鉄筋用の200kN冷間曲げ試験治具
カタログ番号 W-6812

仕様に準拠した、一般的な鉄筋バーに対する曲げ試験用の冷間曲げ試験用治具:ASTM A615、A706、A996A、およびBS4449。最大76mmまでの幅の試験片に対応。スパンは0~480mmの範囲で調整可能。

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2810-410 3点マイクロ曲げ治具

マイクロエレクトロニクス用の100Nおよび1kNのマイクロ曲げ治具
カタログ番号 2810-410、2810-411

一般にマイクロエレクトロニクスのアプリケーションで見られる超小型コンポーネントや試験片の曲げまたは曲げ試験に使用されるマイクロ曲げ治具は、2つの下部アンビルで試験片を支えて、上アンビル1つまたは2つ(オプション)で荷重をかけます。

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2810-412ミニ曲げ治具

超小型部品用の2kNミニ曲げ治具
カタログ番号 2810-412、2810-413

ミニ曲げ治具は、小型部品や試験片の3点曲げ試験向けです。2つの下部アンビルで試験片を支えて、上アンビル1つまたは2つ(オプション)で荷重をかけます。

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インストロン2810-500、動的試験用の曲げ治具

20kN 3点および4点動的曲げ治具
カタログ番号 2810-500/505

インストロンのElectroPuls試験システムで使用できるこの治具は、平面および円形の試験片の試験に適しており、さまざまな種類の材料からなるオプションの4点コンバージョンキットが付属しています。

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インストロン2810-600動的曲げ治具

歯科インプラントの動的試験用の3kN動的曲げ治具
カタログ番号 2810-600/605

歯科用規格ISO 9917、ISO 6872、ISO 4049、またはISO 20795に沿った低荷重動的試験と静的試験の両方に適した低荷重3点曲げ治具(オプションの4点コンバージョンキットが付属)は、インストロンのElectroPuls E1000で使用できる設計になっています。

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曲げ試験データの解析
材料の機械特性の理解
 



通常、曲げ試験は、ISO、ASTM、あるいはその他の公認規格に対して実施されます。それら規格には、必要な試験速度や試験片の寸法などの変数が指示されています。一般に試験片は硬質で、プラスチックや金属、木材、セラミックスなどさまざまな材料で作ることができます。試験片の最も一般的な形状は、長方形または管状形です。

屈曲試験試験では、試験片の凸面には引張応力、凹面には圧縮応力が発生します。これにより、正中線に沿ったせん断応力の領域が形成されます。引張応力や圧縮応力から一次障害が起きるようにするには、スパン対深さ比(外周スパンの長さを試験片の高さ(深さ)で割った値)を制御して、せん断応力を最小にする必要があります。ほとんどの材料で、許容範囲はS/d=16です。材料によっては、せん断応力を十分に低く抑えるために、S/d=32~64を必要とするものもあります。

最大繊維応力と最大ひずみは、荷重増分に対して計算されます。結果は応力ひずみ線図にプロットされます。曲げ強さは、最外層繊維の最大応力として定義されます。これは、試験片の凸面側または張力側の表面で計算されます。曲げ弾性係数は,応力対たわみ曲線の傾きから算出されます。曲線に直線領域がない場合は、曲線に割線を当てはめて傾きを求めます。

最大荷重や最大伸長などの計算値は、ロードセルや伸長器の読み取り値から、通常の引張試験または圧縮試験と同様に記録できます。応力とひずみの値は、曲げ治具の支持スパンと荷重スパン(4点曲げ試験の場合)を組み込んでいるため、計算方法が異なります。これらの測定値を記録することは、試験片の寸法を適切に記録することと同様に重要です。これらの値をBluehill Universalを入力した後、曲げ弾性係数などの計算を求めると、自動的に計算が行われます。

Bluehill Universalにおける曲げ試験用治具の入力
一般的な材料
プラスチック、木材、コンクリートの曲げ試験

ポリマー

ポリマーは、3点曲げ試験が最も一般的です。通常、試験片のたわみはクロスヘッド位置で測定し、試験結果には曲げ強度曲げ弾性係数が含まれます。

木材と複合材料

木材および複合材料は、4点曲げ試験が最も一般的です。4点試験では、支持スパンの中央で試験片のたわみを正確に測定するために、たわみ計が必要です。試験結果には、曲げ強度と曲げ弾性係数が含まれます。

脆性材料

セラミックやコンクリートなどの脆性材料に対する3点曲げ試験の場合、曲げ強度は破壊係数(MOR)ともいいます。この試験では、曲げ強度のデータのみが提供され、剛性(剛性係数)のデータは提供されません。4点試験は脆性材料にも使用できますが、この場合、支持アンビルと負荷アンビルのアライメントが重要であり、通常、これらの材料用の試験治具には自動調心アンビルがあります。





曲げ試験の規格
プラスチック、エラストマー、金属の試験規格





大部分の試験は、ASTMISOといった規格団体によって公開されている既存の規格に対して実施します。これらの規格には、さまざまな種類の材料(金属プラスチック、エラストマー、織物、複合材料)だけでなく、医療機器自動車部品家電などの完成品について許容できる試験パラメータと試験結果が指示されています。こうした規格は、サプライチェーンに入る材料と製品が想定されている機械的特性を発揮し、最終段階でその用途に応えられることを保証します。製品の欠陥によるコストや安全性への影響は計り知れません。このため、適用される規格に製品が適合しているかどうかを容易に判定できるよう設計された、高品質で正確な試験機に投資することが奨励されます。

 


  • ASTM C1550 | 繊維補強コンクリートの曲げ靱性
  • ASTM C1609 | 繊維補強コンクリートの曲げ試験
  • ASTM C880 | 規格石材の曲げ強度
  • ASTM C99 | 規格石材の破壊係数
  • ASTM D143 | 木材の曲げ特性
  • ASTM D6272 | プラスチックおよび電気絶縁材料の曲げ特性
  • ASTM D790 | プラスチックの曲げ試験
  • ASTM E190 | 溶接部のガイド付き曲げ試験
  • ASTM E290 | 延性材料の曲げ試験
  • ASTM F2606 | 3点曲げバルーン拡張型血管ステントおよびステントシステム
  • ISO 178 | プラスチックの曲げ特性の測定
  • ISO 14125 | 繊維強化プラスチック複合材料の曲げ特性
  • ISO 14130 | ショートビーム法による繊維強化複合材料の見掛けの層間せん断強度の測定
  • ISO 3133 | 木材の曲げ特性
  • EN 12089 | 断熱材製品の曲げ特性の測定

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