校正と検証:精度の言語
正確な測定は、あらゆる機械試験の基盤です。試験システムの精度、トレーサビリティ、規格適合を確保するには、校正と検証の違いを理解することが不可欠です。新材料の適格性評価、生産ロットの妥当性確認、業界規格への適合維持のいずれであっても、データの信頼性は次の重要な原則にかかっています。試験装置は、校正と検証の両方が実施されていなければなりません。
これら2つの用語はしばしば同義で用いられますが、目的の異なる別個のプロセスを指します。Instronの万能試験システムや動的試験システムなどの力測定システムに依存するあらゆる試験室にとって、この違いを理解することは不可欠です。
本記事では、国際的に認知された計量学の枠組みと、国際計量用語集(VIM)、ASTM E4、ASTM E74、ISO 376、ISO 7500-1を含む、一般に参照される力測定規格を用いてこれらの概念を解説します。
なぜ精度には独自の言語が必要なのか
計測科学では、明確さが不可欠です。校正、検証、正確さ(accuracy)、精密さ(precision)、不確かさ(uncertainty)、トレーサビリティといった用語には厳密な定義があり、それが試験室の運用方法や装置性能の評価方法を左右します。
精度に関する共通言語がないと:
- 試験結果の信頼性が低下します。
- 監査がより困難になります。
- 適合リスクが増大します。
- 装置が誤って解釈されたり、不適切に使用されたりする可能性があります。
これらの問題を避けるためには、校正と検証を正しく定義することが重要です。
校正とは?
国際計量用語集(VIM 2.39)[JCGM 200:2012]によれば、校正とは次のとおりです。
計測器が示す値と、参照標準によって実現される対応する値との関係を、それぞれに付随する測定不確かさとともに確立する操作。
実務上、校正とは、校正済みの参照機器と、試験対象(試験システムのロードセルや力測定システムなど)との比較です。
校正では通常、次の比較を行います。
- 参照力標準(例:ASTM E74またはISO 376に従って校正された力検証器)
- 評価対象の機器(例:ASTM E4またはISO 7500-1に従って評価される万能試験機)
校正の目的は、機器の指示値がトレーサブルな参照値とどの程度一致しているかを把握することです。
校正の特性
- 測定データを生成する。
- 測定不確かさを報告する。
- 計量トレーサビリティを確立する。
- 調整の必要性を示唆する可能性のあるデータを提供する。
- 合否判定は行わない。
検証とは?
VIM 2.44によれば、検証とは「対象となるアイテムが規定の要求事項を満たしているという客観的証拠の提示」と定義されています。
実務上、検証とは、次のような規格で定義された性能要求事項を機器が満たしているかどうかを確認する適合性評価です。
- ASTM E4:試験機の力の校正および検証のための標準実施要領。
- ISO 7500-1:引張/圧縮試験機―力測定システムの校正および検証。
検証の特性
- 合否評価を提供する
- 校正データを使用し、適用される判定規則に基づき、必要に応じて測定不確かさも考慮する
- 規定要求事項への適合を確認する
- システムが要求公差を満たさない場合、調整につながることがある
- 校正関係を確立するものではない
検証は、「この機器は要求される性能基準に適合しているか?」という問いに答えるものです。
特定の用途への適合性は、通常、検証の特殊な形式である「妥当性確認(バリデーション)」を通じて確立されます。
校正が答える問い:
「この機器はトレーサブルな参照標準に対してどのように性能を示すか?」 校正は、機器が規定の性能要求事項を満たしているかどうかを判定しません。その判定は検証で行います。
校正と検証:並列表
| 項目 | 校正 | 検証 |
| 定義 | VIM 2.39 | VIM 2.44 |
| 目的 | 測定関係と不確かさを確立する | 規定要求事項への適合を確認する |
| 結果 | 測定データ、トレーサビリティ、不確かさ | 合否判定 |
| 一般的に適用される規格 | ASTM E74、ISO 376、ASTM E4、ISO 7500-1 | ASTM E4、ISO 7500-1、ASTM E74、ISO 376 |
| トレーサビリティ | 校正の連鎖により確立される | 校正により確立されたトレーサビリティに依拠する |
| 調整 | 校正データが調整の必要性を示す場合がある | 検証で不適合が判明した場合、調整が行われることがある |
| 頻度 | 品質システム、規制要求、またはリスクに基づく間隔分析により決定される | 品質システム、規制要求、または試験規格により決定される |
校正は精度とトレーサビリティを確立し、検証は性能要求事項への適合を確認します。測定の完全性を維持するには、両方のプロセスが必要です。
正確な測定の基礎
校正と検証を理解するには、計量学の3つの基本概念に精通している必要があります。
正確さ(Accuracy)と精密さ(Precision)(VIM 2.13、2.15)
- 正確さは、参照値への近さを表します。
- 精密さは、測定の再現性を表します。
システムは一貫した結果(高い精密さ)を出せても、測定値が参照値から継続的にずれていれば不正確である可能性があります。
測定不確かさ(VIM 2.26)
測定不確かさは、測定量に合理的に帰属し得る値のばらつきを特徴づけるパラメータとして定義されます。
不確かさが重要な理由:
- すべての測定には不確かさが含まれます。
- 検証の判定は、適用される判定規則に応じて不確かさを組み込む場合があります。
- 測定誤差は許容限界への近さを決定し、不確かさは、誤受入れ確率および誤却下確率(PFAおよびPFR)というリスク表現においても重要な要因です。
計量トレーサビリティ(VIM 2.41)
トレーサビリティとは、測定結果を認知された参照標準に結び付ける、途切れのない文書化された校正の連鎖です。
力の校正において、トレーサビリティの連鎖は通常、次のとおりです。
- 国際単位系(SI)による測定単位の実現。
- 国家標準または一次標準(多くはデッドウェイト式力標準で実現)。
- 参照力検証器(ASTM E74またはISO 376に従って校正)。
- 作業標準
- 顧客の試験システム(ASTM E4またはISO 7500-1に従って検証)。
このトレーサビリティの連鎖により、測定結果は説明可能で信頼性が高く、品質要求事項に適合したものとなります。
Instronシステムにおける校正と検証の適用
Instron万能試験機は、測定の完全性を維持するために標準化された手順に依拠しています。
校正には次が含まれます。
- ASTM E74またはISO 376に適合する力検証器を使用する。
- 複数の荷重点で値を比較する。
- 不確かさとトレーサビリティを確立する。
検証には次が含まれます。
- ASTM E4またはISO 7500-1の性能公差を適用する。
- 試験機が要求される性能限界に適合しているかを判定する。
- 合否判定を発行する。
ASTM E4を含む多くの試験規格では、検証プロセス中に校正データを収集することが求められており、これらの作業は同時に実施されることが少なくありません。
校正は試験機が正確な測定データを生成することを保証します。検証はシステムが規定要求事項に適合していることを確認します。
校正*と検証を実施するタイミング
校正は通常、次の場合に実施します。
- 新しいロードセルまたは力測定コンポーネントを設置したとき。
- 修理または部品交換後。
- 過負荷事象の後。
- 品質システムまたはリスクに基づく校正分析で定義された間隔で。
- 試験装置の移設後(ASTM E4で要求)。
検証は通常、次の場合に実施します。
- 受入試験または重要な生産試験を実施するとき。
- 定期的な品質チェックを実施するとき。
- 試験装置の移設後(ASTM E4で要求)。
- 校正間隔の間に継続的な適合を確認するとき。
用語を誤って使用すると問題が生じる理由
校正と検証を混同すると、次の結果を招く可能性があります。
- 外部監査での不合格。
- 不適合な試験報告書。
- 装置性能の誤記。
- 誤った受入判定。
- 測定トレーサビリティの喪失。
バイオメディカル、航空宇宙、自動車試験を含む規制産業では、これらのリスクが重大な運用上および規制上の影響をもたらす可能性があります。
Instronの専門性
Instronは、材料試験システムが厳しい試験環境で求められる精度、トレーサビリティ、規格適合を維持できるよう支援することを専門としています。
当社の対応内容:
- NVLAP(ラボコード200301-0)による、ISO/IEC 17025認定のオンサイト校正サービス。
- ASTM E4およびISO 7500-1に準拠した力の校正および検証。
- デッドウェイト標準による一次力の実現、およびASTM E74とISO 376に準拠して校正された二次標準。
- 測定不確かさの専門的分析。
- 校正間隔および品質システム要求事項に関するコンサルテーション。
当社のフィールドサービスエンジニアは工場で訓練を受け、Instronのグローバル校正ラボネットワークを通じて監査されており、一貫性が高く信頼できる測定性能を確保しています。
適切な校正プロバイダーの選定について詳しくは、校正プロバイダーがリスクに与える影響をご覧ください。
まとめ
- 校正は、測定関係、不確かさ、トレーサビリティを確立します。
- 検証は、規定の性能要求事項への適合を確認します。
- 両プロセスは異なるものの、相補的な役割を担います。
- 信頼性が高く、説明可能で、規格に適合した試験結果を得るには、両方が必要です。
精度の言語を理解することで、試験室は情報に基づいた意思決定を行い、適合を維持し、信頼できるデータを作成できます。
*Bluehill Universal(BHU)における「ソフトウェア校正」に関する注記
多くのユーザーは、Bluehill Universal(BHU)内の電子的な「Calibration(校正)」機能を実行します。この機能はシャント校正を行い、測定用電子回路のバランスを取り、内部抵抗の調整をリセットします。このソフトウェア校正は、サービス訪問の合間に測定の安定性を維持するのに役立つ場合がありますが、Instronのフィールドサービスエンジニアが参照標準を用いて実施するトレーサブルな校正の代替にはなりません。計量トレーサビリティと適用試験規格への適合を維持するため、定期的なオンサイト校正は引き続き不可欠です。