ISO 11040-8 改訂:
2026年改訂がプレフィルドシリンジ試験に意味すること
ISO 11040-8の最新改訂では、システムレベルの性能要求事項、意図する使用(Intended Use)に関するガイダンスの拡充、ならびに新たな投与時間(Administration Time)試験方法が導入されました。品質保証およびR&Dチームが知っておくべきポイントを解説します。
ISO 11040-8とは? なぜ重要なのか?
ISO 11040-8は、完成品のプレフィルドシリンジに関する要求事項および試験方法を規定する国際規格です。個々の構成部品を扱うISO 11040シリーズの他規格とは異なり、ISO 11040-8ではプレフィルドシリンジをコンビネーション製品として評価し、実際の臨床使用を反映した条件下でデバイス全体の性能を総合的に評価します。
本規格は、手動注射に使用されるシリンジだけでなく、オートインジェクターなどの針ベースの注射システム内で使用されるシリンジにも適用されます。この区別は重要であり、使用に必要なすべての構成要素(プランジャー、針など)を装着した状態で、可能な限り実使用条件に近い形で試験を実施する必要があります。
2026年改訂は2016年の初版に置き換わるもので、試験方法、定義、適用範囲に重要な変更が導入されています。これらはすべて、設計検証プログラムの強化と、コンビネーション製品の統合へと進む業界動向との整合を目的としています。
ISO 11040-8 2026年改訂の主な変更点
1. 意図する使用(Intended Use)の定義拡充
改訂規格における最も根本的な変更は、意図する使用(Intended Use)の定義が大幅に拡充されたこと、そしてそれが記載されたすべての試験手順に反映されるべきであるという要求がより明確になったことです。
改訂規格では、意図する使用(Intended Use)に以下を考慮する必要があります:
- 治療適応
- 投与の重要度(例:緊急使用か、定期的な投与スケジュールか)
- 投与経路(皮下 vs. 筋肉内)
- 患者集団およびヒューマンファクター
- 臨床環境 vs. 在宅使用環境
- 輸送および環境条件
これらの要因は、適切な根拠を文書化することで、試験方法に直接影響を与えることができますし、与えるべきです。例えば、緊急投与を意図したデバイスでは、緊急時の投与シナリオの予測不能性を反映するために、Break LooseおよびExtrusion Forceの評価を高い速度で実施する必要がある場合があります。
2. Break LooseおよびExtrusion Force試験が附属書Aで定義
Break LooseおよびExtrusion Force試験は、ISO 11040-4の附属書E.1から分離され、ISO 11040-8内の独立した附属書Aとして規定されました。基本的な方法論は従来版と概ね一致していますが、いくつかの重要な明確化が追加されています:
- データ取得レート:本試験における理想的なサンプリングレートとして500 Hzが明示されています
- 試験速度:100 mm/minは引き続き適切ですが、意図する使用(Intended Use)に基づいて速度を調整すべきであることが強調されています。針ベースの注射システム内で使用されるデバイスでは、120~420 mm/minが適切な場合があります
- 気泡の押し出し:気泡押し出し時にプランジャー行程末端で荷重低下が生じ得ることを規格が明示的に認め、Extrusion Forceの報告からこの力を除外することを要求しています
現在この試験を実施している組織にとって、これらの変更は主にハードウェア改造ではなく、ソフトウェアの試験メソッド更新が必要になるものです。
3. 液漏れおよび耐破裂性を附属書Cに統合
改訂規格では、「プランジャーを越えた液漏れ(Liquid Leakage Past the Plunger)」および「耐破裂性(Burst Resistance)」試験が新しい附属書Cに統合されました。特に、耐破裂性は補足試験として位置付けられ、主にオートインジェクターなどの針ベースの注射システムでの使用を意図したプレフィルドシリンジに対して要求されます。
以下の表は、2つの方法の主な違いをまとめたものです:
| 試験パラメータ | 液漏れ | 耐破裂性 |
|---|---|---|
| 針の閉鎖 | 適切な針の閉鎖(チップキャップ、RNSなど)が装着されていることを確認 | 適切な方法またはツールで針先を能動的にシール |
| 力の付与方法 | 使用を意図したプランジャー | 同等のプランジャー治具 |
| 試験圧力 | 300 kPa | 使用時に想定される最大圧力+20% |
| 保持時間 | 30~35秒 | 想定注入時間 |
| 不合格基準 | プランジャーストッパーを越えた目視での漏れ | 目視での漏れ、または物理的な亀裂/破損 |
4. 新しい試験方法:投与時間(Administration Time)(附属書D)
規格への最も大きな追加点は、附属書Dで導入された、条件付きで適用される投与時間(Administration Time)の新しい試験方法です。
本試験は、連続または定義された力プロファイルの下で、用量を完全に排出するのに要する時間を測定することで投与の容易さを評価します。特に、生物製剤などの高粘度薬剤製剤に関連が高く、患者が手動で用量を投与できるか、またはオートインジェクターが適切かを厳密に検証する必要がある場合に有用です。
今、これが重要である理由
デバイスメーカーは、高い注入力の課題に対応するためのシリンジ機能(短い針長や超薄肉針など)をますます開発しています。投与時間(Administration Time)試験は、意図する使用(Intended Use)の文脈で、これらのイノベーションを既存技術と比較するための標準化された方法を提供します。
装置要件
治具のセットアップはBreak LooseおよびExtrusion Force試験と同一ですが、注入中に力を維持するための荷重制御機能が必要です。規格では制御許容差を規定していませんが、ほとんどの最新試験システムは±1 Nに対応できるはずです。
本方法は設計検証を超えた価値もあります。デバイスメーカーは、さまざまな流体粘度にわたるベースラインデータを生成し、初期段階の特性評価を支援するとともに、薬剤-デバイスのパートナーリング判断におけるリスク低減に活用できます。
品質保証およびR&Dチームへの実務的な示唆
ISO 11040-8の2026年改訂は、より広範な業界の変化を反映しています。製薬企業は社内のデバイス専門性を拡充し、開発のより早い段階からデバイス関係者を関与させています。本規格は、その変化を以下の点で支援します:
- 設計検証における曖昧さを低減するより決定論的な試験方法
- 文書化された根拠に基づき試験パラメータを調整できるより明確な意図する使用(Intended Use)の枠組み
- 開発初期段階でプレフィルドシリンジプラットフォームの予備特性評価を可能にし、後工程での試験負担を軽減する予備特性評価機能
2016年版に基づいて現在試験を実施している組織では、移行に伴い主にソフトウェアの試験メソッド更新が必要になります。特に、データ取得レート、速度パラメータ、気泡押し出し時の力の除外ロジックに関する更新です。ほとんどのラボでは、大きなハードウェア変更は想定されません。
要求事項および試験方法の仕様の全体については、ISO 11040-8:2026規格本文を直接ご確認いただくことを推奨します。
よくある質問 (FAQ)
ISO 11040-8は、完成品のプレフィルドシリンジに関する要求事項および試験方法を規定する国際規格であり、意図する臨床使用を反映した条件下で、薬剤-デバイスのコンビネーション製品として評価します。
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プラットフォームから治具、ソフトウェアまで、Instronは製薬および医療機器チームがISO 11040に基づいてプレフィルドシリンジ性能を検証するために必要なツールを提供します。
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著者について
ランドン・ゴールドファーブ
Landon GoldfarbはInstronのリード・プロダクト・マネージャーで、静的試験のプロダクトマネジメントチームを統括しています。顧客およびエンジニアリングと緊密に連携し、Instronの静的試験ポートフォリオ全体にわたって、顧客の声に基づくイノベーションを推進しています。高度に規制された業界における深い専門性を背景に、Landonとそのチームは、一般的な品質管理から高度な研究開発(R&D)まで、幅広い市場の組織と協働し、世界中の製薬および医療機器顧客に対して特に豊富な知見と経験を提供しています。
業界で信頼される発信者として、規格策定に貢献するとともに、技術出版物や学会発表を通じて実践的な知見を共有し、ベストプラクティスを提唱しながら、医療機器試験の科学をグローバルに前進させています。