ヘアケアにおいて機械試験が重要な理由
毛髪は、測定可能な機械的特性を持つ生体繊維です。シャンプーやコンディショナーが、タンパク質の付着、キューティクルの平滑化、保湿保持などにより繊維構造を変化させると、その変化は次のような測定可能な差として現れます。
- 破断時の引張強度(繊維の健全性)
- コーミング時の摩擦力(なめらかさと水分保持)
機械試験により、「手触りがなめらか」といった主観的な訴求を、客観的で公表可能なデータへと変換できます。規制当局や小売バイヤーは、こうした裏付けをますます求めるようになっています。
試験1:単一毛髪繊維の引張試験
測定内容
引張試験では、特定のシャンプー/コンディショナーの組み合わせで処理した単一毛髪繊維を破断させるのに必要な力を測定します。結果は、処方が毛髪強度に与える影響を直接示す指標となります。
標準試験プロトコル
- 対象処方を用い、同一の管理条件下で10本以上の単一繊維を洗浄します。
- 各繊維を万能試験機(例:Instronシステム)のグリップ間に取り付けます。
- クロスヘッドが一定速度で繊維を引張り、破断するまで負荷します。破断時の最大荷重を記録します。
- 任意:各繊維の平均直径を測定して断面積を算出します。荷重を断面積で除することで正規化した応力値が得られ、メガパスカル(MPa)またはポンド毎平方インチ(psi)で表されます。これにより、研究間や繊維タイプ間で比較可能になります。
結果が商業的訴求を裏付ける仕組み
試験処方で処理した毛髪の平均破断応力を、未処理の対照または競合製品と比較することで、「臨床的に髪を40%強くすることが示されています」といった訴求を裏付けることができます。
試験2:毛髪のコーミング性試験
測定内容
コーミング性試験では、標準化されたコームを毛束に通す際に生じる摩擦抵抗を定量化します。摩擦値が低いほど、保湿性となめらかさが高いことを示し、消費者が効果的なコンディショナーに期待する性能特性と一致します。
標準試験プロトコル
- 毛束を、単一繊維試験と同じ管理条件下で洗浄します。
- 洗浄後、毛束を万能試験機の試験治具に取り付けます。
- 一定速度で、標準化された形状のコームに毛束の長さ方向を通過させます。
- 摩擦力をストローク全体にわたり連続的に記録し、その後平均化します。
毛束は専門サプライヤーから、標準化された重量・長さで、幅広い毛髪タイプのものが入手可能です。認証済み毛束を使用することで、異なるラボや試験日でも結果の比較性が確保されます。
コーミング性結果の解釈
平均摩擦力が低いほど、コンディショナーの効果が高いことを意味します。処方開発者はこれらの値を用いて候補処方を順位付けし、成分濃度を最適化し、「保湿」「うるおい」「フリズ(広がり)抑制」といった表示訴求に必要な定量的根拠を提示します。本手法は、最終製品メーカーだけでなく、有効成分を検証するサプライヤーにも利用されています。
適切な試験装置の選定
両試験には、次の要件を満たす万能試験機が必要です。
- 低荷重測定に対応した定格のロードセル(単一繊維試験では通常1~10 N)
- 高精度で一定のクロスヘッド速度制御
- 毛髪試料用のグリップまたはコーム治具
- 応力計算、摩擦プロファイルの平均化、統計解析用のデータ出力を行うソフトウェア
Instronなどのメーカーの万能試験システムは、両用途で日常的に使用されており、毛髪試験に必要な専用治具を組み合わせて構成できます。お客様のプロトコルに対する治具の適合性については、Instronの材料試験スペシャリストにご相談ください。
よくある質問 (FAQ)
どの試験セットアップが処方に適しているか分からない場合は、
当社チームは、化粧品・パーソナルケア業界の研究開発および品質ラボと連携し、適切な処方の特定から最終製品の訴求根拠の提示までを支える試験プロトコルの構築を支援しています。用途についてお聞かせいただければ、最適な装置構成をご提案します。
著者について
Dan McClellan
Dan McClellanは、Instronで30年以上にわたり、化粧品・パーソナルケア業界の研究開発および品質ラボと密接に協働してきました。深いアプリケーション知識と長年にわたる顧客との関係により、機械試験プロトコルの開発・検証を目指すメーカーにとって信頼できるリソースとなっています。Danは、初期段階の処方検討から最終製品の訴求根拠の提示に至るまで、各用途に適した試験アプローチの選定を支援しています。